【WEO 2014 issue 1】CHINA: 経済成長とシャドーバンキング①

/6に公開されたOECDのワールド・エコノミック・アウトルック(WEO)は、世界経済の現状を考察とデータに基づいて概観するとともに、今後世界経済が「健全な成長(Resilient Growth)」を遂げるためにはどのような政策が望ましいか、ということについて大まかな方針を提示します。

 

近年OECDにおいては新興国が重視される傾向にありますが、特に今回のWEOは中国に注目します。7%超の高成長を続ける中国はすでにグローバル経済における主要プレイヤーですが、一方で金融や公的債務には様々なリスクを抱えています。

 

 

特に「影の銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれる領域での金融リスクの増大は、マクロ経済の安定性に対する懸念をもたらすだけでなく、地方財政にも影を落としています。本記事ではこのシャドーバンキング問題に対する、WEOの分析と提案を要約して紹介します!

現在、中国は依然として7%超の高成長を続けています。そのペースは次第に鈍化しています。今回のWEOでは、2014-30の間に中国の成長率はインドとインドネシアに追い抜かれる、との予測が出されています。

 

一方でその成長を妨げる要因として、国内の金融リスクの増大があります。

 

過剰な信用の増大と地方政府の財政問題がからんだこのリスクは、シャドーバンキング・セクターと呼ばれる会計外の金融取引制度に根差しています。

 

そもそも中国でシャドーバンキング・セクターの発展は、理財商品と呼ばれる高い利率の金融商品の発展にあります。この理財商品は地方政府が出資する不動産や開発事業の債券に出資するものです。

 

そもそもお金の絡む取引は、ローリスクローリターン、ハイリスクハイリターンが一般常識のはずです。しかし、この理財商品が対象とする開発事業は、もし開発が失敗しても地方政府によって自動的に補てんが行われ破綻することがありません。そのため、低いリスクのままで高い利回りを手に入れられるとして、理財商品が売れるようになりました。

 

  また、銀行にとってもこの理財商品は魅力的です。中国では、銀行が国際的な金融規制制度「バーゼルⅢ」への移行途中にあり、融資をするためには手元に準備金をある程度置いておかなければなりません。しかし、この理財商品を利用することでこの準備金の問題を考慮することなしに間接的に融資ができるようになるのです。

 

 

しかし実際にはこうした事業が失敗するたびに、地方政府の債務残高が急上昇しているのが現状です。過剰な理財商品への投資はバブルを引き起こしていますが、そもそも事業を下支えしている地方政府がデフォルトを起こした場合、一気にバブルが崩壊することが考えられます。

 

こうした事態が起きた場合、どうなるのでしょうか?WEOでは中国の中央政府による救済に言及しています。IMFの調査結果を参考にしつつ、中央政府の財政状況は予想される金融恐慌を収束させることができるという見解を示しています。

 

しかし、こうした恐慌は中国国民の資産を減少させ、消費と投資へ悪影響を及ぼすことが考えられます。世界最大級の消費地である中国の需要減退や国内外の投資家の投資意欲の減退は、日本はもちろん、新興国を中心に世界経済へ波及すると予想されます。

 

 

この現状に対して、WEOでは解決の施策について以下に言及しています。

 

    開発事業の規制:不動産バブルの原因は、投資対象が規制されていないことにあります。不動産を担保とした証券(モーゲージ)への規制や土地事業の承認を厳格化することは、1つの対策になると考えられます。

 

 

    構造改革:経済システムを作り変えることによって問題を解決する動きです。例えば、中国では2年後をめどに国内の預金金利の自由化が検討されています。国内の預金金利と理財商品の利回りを近づけることで、市場メカニズムによって会計外へ流れる資金の量を抑え込むという施策です。